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【ラノベ】 学校の階段 (10) [学校の階段]

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ついに最終巻となってしまいました、『学校の階段』。
本当は9巻と10巻の間に外伝があるのですが、この後に読みます。

最終巻ということで総評も交えながら記事を書きます。

単発で終わるはずだったこの作品。
そのせいか1巻の内容は濃いのですが、2巻以降はキャラ1人につき1冊を使って
掘り下げるという展開でした。
後半は総じて幸弘くんの成長の話になりました。

10巻を通してみると、作者の書きたかったテーマというのは
割りと分かりやすかったと思います。

ただ、そのテーマというのがちょっと特殊でして
受け入れられるかは微妙ですね。

主人公が熱血で明るいテーマでもないですし、
主人公が憎悪で暗いテーマでもないですし。

どちらかに寄ってくれれば分かりやすいのですが
とても表現しにくいものを取り扱っています。

主人公の行動理念は
“歪んだ衝動”
とでも言いましょうか。

幸弘くんが悩んでいるモノ。
幸弘くんが立ち向かおうとするモノ。

それは作品中でも、幸弘くん本人が「言葉で説明できない」としています。
なので、一読者である私もよく分かりません。

自分の中で消化できませんが、確かに伝わってきている。
そのもどかしさはありますね。

さて、最終巻ですが大きく3つのパートに分かれています。
幸弘くんの苦悩。
階段部包囲網。
そして最終決戦です。

次期部長の話が出てきたときにもう一年続くのかと思ったら
刈谷くんたちの卒業で終わりなんですね・・・。

幸弘くんの苦悩は、説明しても分からないということで
自分を気にかけてくれる人も邪険にしてしまいます。

というのも、説明しても伝わらないのでしゃべるだけ時間の無駄。
わずらわしいとさえ思っていました。
そして、孤独の中に身を沈めました。

さすがに、周りも気付いてきたようで天ヶ崎さんは
「部活動を楽しむのではなく、強迫観念で走っている」
と的を射た分析をしました。

そして、階段部包囲網。

私はこれを読み始めたとき、カオスだなと思いました。
てっきり作者が最後だからとハチャメチャに詰め込んできたのかと。
やってることも支離滅裂ですし。

でも違いました。

こんなカオスな企画でも、その裏には理由と筋立てがあって
それで発生したのです。

みんなが幸弘くんを心配していた。
幸弘くんはみんなに愛されていた。

三島さんや御神楽さんのように、ダイレクトなアタックもありますし
従姉妹やクラスメイトのように、何気なく優しさを与えてくれる人もいる。

てっきり御神楽さんは本気で乗っ取りに来たのかと思いましたが。
でもやっぱり、山上からの応援は蛇足だったように思う。

刈谷くんと幸弘くんは、確かに同類です。
が、人間はやっぱり一人一人が違います。

刈谷くんは有能なので“一人で乗り切る”ことができました。
そして最後に仲間に会うことができました。

ライバルというよりは共闘者と言った方が正しいかもしれません。
刈谷くんと幸弘くんの最後の戦いは、勝ち負けよりも高めあっていた部分が大きかったと思います。

幸弘くんは刈谷くんほどの有能さはありません。
ですが、それより強力な“人を引き付ける力”を持っています。

求道者として、一人になるのが当たり前の中で
幸弘くんは求道者でありながら人の輪も手に入れたのです。

天ヶ崎さんは、最初の方は幸弘くんに対して強硬な姿勢でしたが
最終的には仲間としてやっていくことを心に決めました。

個人的には天ヶ崎さんと幸弘くんのからみをもっと見たかったのですが
部長戦以降はどちらかというと距離を取ってしまったのが残念です。

それほど、幸弘くんの中にあった衝動という名の獣は
周囲の人間にとって未知ゆえに畏怖する対象だったのでしょうか。

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学校の階段 10 (ファミ通文庫)

学校の階段 10 (ファミ通文庫)

  • 作者: 櫂末 高彰
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2009/07/30
  • メディア: 文庫



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