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【雑記】 ガリヴァ旅行記 (新潮文庫) [読書]

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『ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)』を購入して読了したので感想文を書きます。

ガリバー旅行記と言えば、有名なのでほとんどの人が知っていると思います。
児童文学として幼少のころに知った人も多いかもしれませんね。

ガリバー旅行記の作者スウィフトはこの物語で
何を表現したかったのか。
何を主張したかったのか。

それは人間への憎悪です。
とても平和的なファンタジーとは言えません。

ガリバー旅行記で良く知られているのは、小人の国へ行くお話と
巨人の国へ行くお話ですね。

原作では全部で4編あるのですが、そのうちの前半の2編は
小人と巨人ですが、残りの二つはまた違う場所へ辿り着きます。

前半の2編は、確かに“冒険もの”という書物としてとらえられますが
後半の2編は、よりコアでおどろおどろしいと思います。

子供たちに人気が出るとしたら、明らかに前半の2編ですね。
そこだけを世に出すのも頷けます。

前半の2編も面白いですが、後半の2編はむしろ驚きの方が強いかな。

簡単に言ってしまうと
「人間というのは、斯くも愚かな生物である」
という一言に尽きると思います。

第1章。
小人の国。

この国の人々の考え方の中で興味深かったのが
「子供は親に感謝する必要は無い」
という理念です。

つまり、子供は産まれてきたいと思って産まれてきたのではなく
両親が勝手に性交してその結果産まれてきただけなので
生命をもらったことに対して両親に感謝するいわれはない
という考え方です。

国の態勢としてそうなっているので、両親は子供の面倒を見ません。
ひどく淡泊です。

じゃあ、産まれてきた子供はどうなるかというと
国で用意した保育所に引き取られ、社会に出れるようになるまで
訓練されます。

親の愛情などは一切注がれません。
産まれた後に離れ離れになって、あとは自分で生きていきます。

産んでもらったことに恩を感じる必要は無い。
私としてはとても賛同できる意見です。

第2章。
巨人の国。

この国でもいろんなことがありました。
ですが、一番印象に残ったことをひとつだけ取り上げます。

それというのは、小人として巨人を見るととても醜いということです。

なぜかというと、自分の体が小さいということは相対的に
相手の体は大きくなるわけで。

となると、近くに寄ると皮膚のカサカサやデキ物や毛穴などが
クローズアップされます。

同じサイズなら気にならないことでも、サイズの違いを通してみると
より顕著に目立ってしまい、嫌悪感すら抱いてしまうのです。

ここまでリアルにしなくても・・・、と思うのですが
確かにこれはあり得るかもと思うと
この筆者の想像力の“正確さ”には驚かされます。

第3章。
天空の城ラピュタ。

ラピュタ。
どこかで聞いたことのある名前ですね。

そうです、あのジブリアニメのラピュタです。

実はあのラピュタにはモデルがありまして、
ガリバー旅行記で空に浮く島ラピュタに
主人公が滞在する話があるのです。

つまり、パクリですね。

別にスタジオジブリを非難する気もありませんが
真実はなんなのか?
それだけは知っておいてもらいたいのです。

子のラピュタの設定も実によく考えられていて
(といっても、あくまでファンタジーの範疇ですが)
島の中央に巨大な磁石があって、下方にある土地の
鉱物に対して斥力が働いて、それで浮いているというのです。

操縦の仕方は簡単。
島に設置されている磁石の向きを変えると、上昇したり下降したり
大地の鉱物との力場を調整することにより推進力を得ることも出来ます。

ただし、鉱物が含まれていない土地の上を飛ぶことはできません。
なので、活動範囲は限られているみたいです。

よくもまぁ、そんな昔にこんな大それたことを夢想するな、と
素直に感心してしまいます。

第4章。
馬の国。

馬の国と言っても馬が沢山いる牧場じゃありません。
なんとこの国では馬が知能と理性を持っていて
喋ることも出来ますし、議論や討論をすることも出来ますし
人間と同じような社会も築き上げています。

逆に、人間に相当する猿のような動物は
馬にとって家畜・奴隷です。

ちょうど、現実世界の人間と馬の関係を
逆転させたような感じですね。

恐るべきは、この馬たちの理性の高貴さです。

なんと、この国には犯罪というものがありません。
嘘という概念もありません。
そもそも、嘘を表現する言葉が無いのです。

みんな正直で誠実で、心清らかで徳が高く知能もある。

ここには汚職もなければ、裁判もなければ、
詐欺もなければ、犯罪もない。

全てが統治され、秩序があって、係争ごとも何もない。
あるのは穏やかで平和で理性的な暮らしだけ。

飽食になることもないので病気もあまりない。
したがって、医術も必要ないのでほとんど発達していないようです。

このような国で暮らしているうちに、主人公はここに永住したいと
思うようになりました。

こんな聖人・仙人のような崇高な生き物たちと
己の徳と理性と知を高めたいと願うようになりました。

そして、なんと人間を忌み嫌うようになります。
こんな汚らわしい生物と一緒にいたくない。
そんなハメになるなら、無人島で一人で暮らした方がマシだと。

この変貌には正直驚きました。
朱に交われば赤くなるとはよく言いますが
自分が属する種族に嫌悪感を覚えるまでになるとは・・・。


ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)

ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)

  • 作者: スウィフト
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/07
  • メディア: 文庫



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